つい最近、体調不良が伝えられていたとはいえ、突然な訃報にちょっと驚きました。まだ57才・・・。
ケタ外れな天才
プリンスといえば若い世代の人には格闘技K-1のテーマソングくらいしか知らないかもしれませんが、1980年代には常にチャートには彼の名前があるという時期がありました。
ともかく1980年代というのは他にもマイケル・ジャクソンがいてマドンナがいてっていう、音楽業界でいえば一つの黄金時代だったわけですが、たまたまその3人はアメリカから出てきたスーパースターだけど、UKシーンにもフィル・コリンズがいてデュラン・デュランがいてジョージ・マイケルがいてボーイ・ジョージがいてっていう感じで、負けず劣らずものすごく盛り上がっていた――すなわち音楽業界全体が大きな流れに乗っていた時代だった。
そんな中でプリンスが注目されだした頃、あの見た目から最初「キワモノ感」を感じた人もいたと思うけど、その先入観は彼の作品を聴けば聴くほど吹っ飛んでいきました。そのキワノモノ感は革新的という言葉にとって変わっていったのです。
後に彼の音楽は、全部、自分で作って、自分でアレンジして、自分で楽器を全て演奏して、レコーディングして、そして自分でプロデュースしてた、っていうのを知って、しかもあのクォリティだった、というのを知った時、ケタ外れの天才かもしれない、と思わざるを得なくなるのです。
――この「一人で全部やる」っていうのは、後に彼のホロスコープに表れている、というのに気付くことになるのだけど。
プリンスはもちろんギターに関しては定評があって、世界を代表するギタリストの一人にあげられていることはもはや疑いようのない事実なんだけど、ドラムやその他の楽器のプレイに関しても、そのへんのプロより上手いという評価もあって、この人にはなんとも言えない底知れぬ才能の坩堝を感じてやまないわけです。
プリンスのホロスコープ
プリンスのあのネットリというかウェッティなエロい雰囲気というのは間違いなくアセンダントから来ていて、しかもその主星が天頂(MC)とビタビタなわけだから、彼は唯一無二の象徴的存在みたいになるわけ。
しかもこれは冥王星なので「他を圧倒する存在感」みたくなっちゃって、デビュー前にいくつかのレコード会社が彼との契約をめぐって競争入札をしたというのも、このあたりを見たら納得がゆくものです。
この点だけからしても、彼は「持って生まれてきた人」と言えるんだけど、得てしてこういう人っていうのは成長過程において恵まれてなかったりするわけで、それはマイケル・ジャクソンしかり、マドンナもしかりで、なぜ大成功者は不遇な幼少時代を過ごすのだろうか。
ただ、それを単純に「幼少時代の不遇さをバネにしてハングリー精神で努力したから後の成功がある」みたいな、戦後の根性論みたいなもので解釈してしまうのはちょっとバカっぽい感じがあって――もちろんそれも大事なことなんだけど、それだけならこうしたホロスコープ・リーディングみたいなものは全く無価値なものになる。
殊更アーティストの世界というのは、育った環境から感受性というものが発達していき、それが後に表現力となり、結果として人の琴線に触れる作品を生み出す能力になっていく、というのは大きなプロセスの一つだと思うけど、実際マドンナなどはそうした成長期に感じた鬱屈を楽曲にしていて、要はそうした体験から育んだ感受性を活かせるセンスを持っているのかどうか、というのがキーかなと。
実際プリンスのホロスコープには、そうした幼少時代の不遇さが暗示されていますが、ただ彼はそれをイメージの世界にぶつけることができるようになっている――それはこの図の海王星であり、この海王星には無限の広がりがあります。
のちに彼がハイペースで作品を生み続けることができたというのは、この海王星イメージが無限の豊かさを持っていたからというのがポイントの一つですが、それを6ハウスのいう「仕事」に結びつけることができたわけで、そういう意味でこのホロスコープは割とシンプルでストレートな構造になっています。つまりシャープに特徴が出やすいってこと。
その6ハウスでイメージの広がりを受け取るのは牡牛座の金星で、イコールそれが彼のセンスになるわけ。しかも牡牛座の金星だから、この部分はモロに「センスそのもの」です。
(“When doves cry”なんて、今聴いてもセンスの塊にしか思えない――ベースさえ使わず、ドラムとキーボードだけであの世界感)
そしてこのホロスコープの暗示する通り、確かに彼は不遇な幼少時代を過ごしてきた――子供の頃に両親が離婚し、兄弟とともに母親に育てられたという――そうであったとしても、父親からの影響は宿命的なものであり、なぜならジャズピアニストだったという父のDNAを引き継ぐという形でプリンスはこの世に生まれてきている(ホロスコープにそう表れている)ので、実生活で父親から離れて生きることになったとしても、父親の血筋は彼の中で脈々と受け継がれ、そしてそれが彼の人生を引っ張っていくことになる。
その彼が何種類もの楽器を自在に操ることができたというのも、おそらくこのDNAからのものだったでしょう。というのも、この生命体は多才さを磨くことにより人生を太くしていくものという風に示されているし、実際プリンスはそのようにして自分の人生を切り開いてきたわけで、つまりすべてはこのホロスコープ(人生の設計図)通りに生きていただけ、と思います。
ワーナー・ブラザーズとの確執
出生図だけでも他にいろいろ感じることはあるんだけど、時間もないので話題を変えます。
彼の人生で大きな転機となったと言われているのは、1993年にワーナー・ブラザーズと破格の契約を結んだことと言われていますね。これは当時、前例のないほど大きな契約だったのだけど、後にこれが彼を苦しめることになりました。というのもこの頃、彼は「プリンス」の名前を捨ててしまった――なんか♂♀マークを合体させたようなシンボルを称号にしたのです。今で言うアイコンみたいなものか。
もちろん当時話題になって、結局「The Artist Formerly Known As Prince(かつてプリンスとして知られたアーティスト)」みたいな奇妙な呼ばれ方になってしまった。
このことについて、個人的には「あ~あプリンスはマジでキワモノになっちゃったんじゃね」みたいな印象でした。なんか尖ったアーティストってそういう奇抜なことをやりがちだよね、っていう感じ。――ただ後になって、これはワーナーとの契約で商標上「プリンス」という名前が使えなかった、というのを知ったんだけど。
実際彼は、このワーナーとの契約を奴隷契約みたいに言って、自分の自由な活動を妨げられているとして、ワーナーとの確執がどんどん深まっていったのです。
その頃というのは、彼は火星の年齢であり、このホロスコープでの火星は牡羊座度0度の「アザラシ」の度数です。この度数は春分点から地球に舞い降りたばかりの無垢な状態であって、逆にいうと大人の「穢れた」世界を知らない。そんな生まれたばかりのアザラシが、YODで縛られているわけ。
で、この火星時代に彼は契約に縛られてしまった。だけどこれは5ハウスの火星じゃん、牡羊座じゃん、っていうので、まあ自分でやりたいようにやりたい。だけど契約が許さない、という状態を表していたのです。
身体は弱かった?
そんな彼もプライベートは謎に包まれた存在だったけど、この月を見ると、そうなって当然と思う。そしてもう一つ、全体的な感じからして、決して健康な身体ではなかっであろうと。
――実際てんかん持ちだったとか、鬱があったとかのウワサはあるようですが。
たまたま先日のサンデー・ジャポンのデーブ・スペクターのコーナーで、プリンスの人生最後になってしまったアトランタでのライブ映像を流していたけど、結局このライブでは一度も立って歌うことはなかった、と言ってました。
それほど体調が思わしくなかったのかもしれません。
パープル・レインよ永遠に。
【※ホロスコープ画像はSolar Fire Ver.9を使用】